高速切断機との違い

「試料切断機」と検索した際に表示される「高速切断機」についてまとめています。

試料切断機と高速切断機の違い

試料切断機で検索すると高速切断機のメーカーや製品が表示されることがあります。「高速」という言葉から切断作業時間が短縮されることをイメージしますが、高速切断機の特徴はそれだけではありません。あらためて、試料切断機と高速切断機の違いについて説明します。

試料切断機とは

試料切断機は観察や試験、測定を目的とした試験片の前処理段階として切断する機械のことをいいます。金属や非金属の組織解析、金属熱処理・表面処理品の硬度測定など、さまざまな目的のためにできるだけ、切断面のダメージを抑えて美しく仕上げることが求められるもの。卓上小型タイプから床置きで大型試料の切断が可能なものまで幅広いラインナップがあります。

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高速切断機とは

高速切断機は、切断砥石を使用して鉄パイプやワイヤーロープなどの金属製の素材をスピーディーに切断することができる機械です。高速の定義に厳密な数値は定められておらず、業界では乾式切断の場合周速度で概ね3,000m/min~、湿式切断の場合で概ね1,500m/min~2,000m/min程度のものを高速切断機と呼ぶことが一般的です。

高速切断機の特徴

高速切断機は、一般的なディスクグラインダーと比較すると切断砥石、モーター出力ともに大きいため、切断時間が早いことが大きな特徴です。また、卓上に設置するタイプが多いことから、狙った部分を高い精度で切断することが可能。また、切断砥石は切断する素材の厚みによって異なり、大きいサイズの切断砥石を使用すれば厚みのある素材を切断することもできます。さらに、切断面の仕上がりにこだわるのであれば、回転数の多い機種を選定するなど、素材や目的に合わせて機種を選定することが必要です。

高速切断機の種類

AC電源式

AC電源式は、コンセントから電源を取るコード式のこと。高速切断機は基本的に設置して使用する機械のため、ほとんどの機種はAC電源式です。AC電源式には単相100V・単相200V・三相200Vの3種類があり、砥石外径が305~355mmの機種では単相100Vが、砥石外径405mm以上の機種では三相200Vが多く使用されています。

AC電源式は電気のある場所でなら連続して使用することができ、パワフルで安定した作業が可能です。もし作業する場所の近くにコンセントが無い場合は、延長コードを使用する必要があります。

充電式

充電式のメリットは、電源環境を気にしなくて良いこと。手軽に持ち運ぶことができるため、場所を選ばず作業することが可能です。本体に電源コードがないため、後片付けも簡単に行うことができます。ただし、充電が切れてしまうと作業ができなくなってしまうので気を付けましょう。予備のバッテリーを常備しておくといつでもバッテリー交換ができるので安心です。

現在販売されている充電式高速切断機は、マキタが製造している機種のみ(2023年4月現在)。小型・軽量でありながら高出力で、どんな現場でも軽快かつパワフルに切断作業を行うことができるでしょう。

高速切断機の使用用途

高速切断機は、切断砥石と加工する素材をアーム及びバイスで固定して切断するため、金属を安定した状態で切断することが可能です。そのため、細長い素材や薄くて脆い素材などを切断するのにも向いています。モーター回転数が多く大量に金属を切断することが可能であることから、農業関係の資材や短管パルプなどの切り出しに活用されることも多いです。また、バイス傾斜調整により、角度切断が可能となるため、アングル材を組み合わせたフレームの作製などにも活用されています。

高速切断機を選ぶ際のポイント

自社のニーズに合う高速切断機を選択するためには、3つのポイント「切断能力」「切断角度」「バイスの開き具合」をふまえておくことが大切です。それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。

切断能力

切断能力については、3つの観点「砥石のサイズ」「パワーの強さと消費電力」「回転数」から考えるようにしましょう。高速切断機が備えているこれらの切断能力によって、どのくらいきれいに、そしてどのくらいスピーディーに切断できるかが決まります。

砥石のサイズ

高速切断機には、4種類のサイズ展開があります。使用する切断砥石の外径が、4つのサイズに分かれているためです。小さいものから順に、305mm・355mm・405mm・445mmとなっています。この中で、対応モデルが豊富なのは、305~405mmのものです。

パワーの強さと消費電力

パワーが強ければ強いほど、作業をしやすくなります。スピーディーに切断作業を進めたいのであれば、やはりパワーの強い高速切断機がおすすめです。ちなみに、パワーの強さと消費電力の大きさは比例しているので、製品に定格出力の記載がなされていないときには、できれば消費電力の大きなモデルを選びましょう。

回転数

製品によってバラつきがみられるため一概にはいえませんが、おおよその目安としては、1分間の回転数は3000〜4400回程度であると考えておくとよいでしょう。回転数が多ければその分、きれいに切断しやすくなります。

切断角度

ほとんどの高速切断機には、バイスをななめに固定し、角度をつけて切断するための機能が搭載されています。いわゆる「角度切り機能」と呼ばれているものです。家庭向けのモデルでは、45度までの設定が可能なタイプが主流になっています。

ただし、ひとつ注意しておきたい点があります。それは、右は45度でも左は30度になっているなど、左右に差がみられるモデルもある、ということです。切断するときにこまかく角度をつけたいのであれば、こういった詳細についても、あらかじめ確認しておくことが大切です。

バイスの開き具合

切断する対象物を固定する部分のことを、バイスといいます。ですから、バイスがどのくらい開いているかによって、扱える対象物の幅が決まるわけです。製品によってバイスの開き具合はさまざまです。ひとつの目安として、対象物が鉄板などであれば200mm以上が必要になる場合が多いですが、対象物が丸パイプなどであれば、200mm以下でも扱える場合が多いと考えておくとよいでしょう。

また、バイスについてはほとんどの製品が右利き用に製造されていますが、業務モデルの高速切断機であれば、バイスの位置を選択できるようになっているものもあります。左利きの方が使用できるタイプをさがしている場合は、ぜひチェックしてみてください。

試料切断機と高速切断機を項目別に比較

切断精度

高速切断機は切断砥石を使用する金属切断工具です。束ね切りや角度切断も楽にできることから、高速で大量に切断することに特化しています。ただし砥石の研削切断なので、試料切断機と比較すると切断面の仕上げ状態はあまり良くはありません。切断は速いですが、切断面にヤケやバリなどが発生してしまいがちです。

一方、試料切断機は主に顕微鏡による組織観察や硬度測定などの試験片を切り出すといった用途で使用されるため、高い切断精度が求められます。試料切断機なら、砥石の刃先が丸く欠ける現象であるチッピングや切断試料に細かいヒビが入ってしまう現象を指すクラックを防ぎ、試料の品質を維持しながら切断作業を行うことが可能です。また、切断過程で発生する熱や摩擦を最小限に抑え、切断面のバリやカエリがない試料片を作成することができます。

切断できる素材

大型の切断砥石で金属材料を切断する電動工具である高速切断機。主に鉄パイプやワイヤーロープ、アングル材などの金属製の細長い素材を素早く切断することができます。高速切断機は砥石を覆うカバーがあり、切断材料をバイスで固定して切断するため、キックバックや振動のブレなどの影響を受けずに安全に切断することが可能です。

細長い素材の切断は場合によっては砥石が引っかかって暴れてしまうこともあるため、長物の切断作業が多い場合は高速切断機がおすすめです。逆に、板金やバイスで固定できないものには向いていません。

試料切断機は、さまざまな素材を切断することができます。金属やセラミックス、合成樹脂・鉱物・生物試料・電子材料など多様な素材を切断することができるため、幅広い分野で活躍することが可能です。

活用されている業界

高速切断機は主に金属加工業界で使用されます。組織分析や硬度測定、切断時の熱による組織変化を起こさない作業に使用される事が多く、パイプなど鋼材を切断するなどの生産用途に用いられることも。また、切断速度が速く手軽に切れ、切断コストも低いことから農業関係の資材カットや単管パイプの切り出しなどに活用されることもあります。

試料切断機を使用する業界は多くありますが、特に研究開発や電子部品、半導体、自動車や航空機の部品、医療機器などを製造する製品製造業界などで多く活用されます。使用用途は、各種金属・非金属の組織解析や金属熱処理・表面処理品の硬度測定、溶接部の断面検査、成型品の断面形状検査などです。

高速切断機におけるリスクアセスメントについて

高速切断機を取り扱う上でどのような事故が起こりうるのか、そのリスクとそれに対する対策の実情を把握しておくことは大切です。

ここからは、高速切断機を取り扱う上で起こりうる事故と、取り扱う際の注意点について解説します。

リスクアセスメントとは?

リスクアセスメントとは、職場の危険性や有害性を見つけ出し、そのリスクを除去・低減するための方法を把握しておくことです。事業者は、その結果に基づき、適切な災害防止対策を講じる必要があります。

リスクアセスメントをすすめるには、まず職場に潜在している危険性または有害性を特定します。その危険性・有害性に対して、既存の予防措置による災害防止効果を考慮したうえで、起こりうるリスクを見積ります。

そのリスクの大きさに基づいて対策の優先度を決め、リスクの除去・軽減の措置を検討。その結果を記録する一連の流れをリスクアセスメントといいます。

リスクアセスメントを導入することによって、労災を防ぎ労働者の安全を確保できるというメリットがあります。実際、リスクアセスメントを行っている事業所では、災害の発生率が大幅に下がっているともいわれています。

高速切断機を取り扱う上で起こりうる事故とは?

高速切断機を取り扱う上で起こりうる事故を紹介します。

飛んだ切紛が目に入る

高速切断機で切断すると、切粉が空気中に舞います。その切り粉が目に入ると危険です。

加工物が跳ねる

高速切断機を使用する際は、バイスに加工物をしっかり固定することが大切です。しっかり固定しないと、加工物とグラインダーがバランスを失ってしまい、加工物が跳ねて体にあたる恐れがあります。グラインダーも割れて飛んでくる危険があります。

手を切る

高速切断機のスイッチをオフにした後も、グラインダーは惰性で回転しています。回転している部分に触れると、手を切断する恐れがあります。

高速切断機を取り扱う上での注意点

高速切断機を使用する際は、確実に停止するまで加工物や固定バイスに触れないことが大切です。電源を切った後もグラインダーは惰性で回転するため、焦らずに回転が停止するのを待ちましょう。この対策案を実施するために、指差し呼称を行動目標として設定するのも有効です。

また、切断砥石の前に立ち切断作業を行うと、砥石が破損した際に、破損した砥石で怪我をする危険があります。この危険については、切断時には切断碇石から少し離れた位置で切断することで対策ができるでしょう。高速切断機の正面からは少し離した作業場所の床に、立ち位置指定ラインを書くことでも対策可能です。

高速切断機の使用は、危険または有害な業務に設定されています。使用にあたっては「自由研削碇石取り替え試運転作業」として、労働安全衛生法に基づいた特別教育が必要です。

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